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フジサンケイクラシック 2019
51歳の谷口徹が、首位と1打差の暫定2位に「もうちょっとしがみついていたい」
薄闇の中で白い歯を見せ、こぼれる汗をぬぐった。
日没間近の最終18番で、50歳が51歳に「ナイスショット!」。
ひとつ下の手嶋多一が、惜しみのない賞賛の声を浴びせた。
谷口が右手前の深いバンカーから、クラブを思い切り開いて絶妙な寄せ。最後のナイスパーセーブで5アンダーを守った。
谷口と手嶋。
互いにシニア入りを迎えてから、同組で回ることがやたらと増えた。今年はこれで、もう5ラウンド目。
「もう飽きた。もっと若い子と回りたい」。
会うたびに、2人で口を揃えてむきになり、子どものように競い合う。
この日は谷口が、3差で手嶋を下した。
「2勝2敗。最初、彼の方がよいゴルフをしていたけど実力は僕が上なんで」と、強がった。
「前は勝負にならんかったのに。最近は手嶋くんと競い合ってる。そういう自分がちょっと寂しい…」。
実は近頃、苦戦が続いていて切ないため息。
ここ富士桜にコースが移ってきた05年から、毎年出場を続ける”皆勤賞”。だが、ここ3年の谷口には予選落ちが続いている。
改良を重ねるコースは年々距離が伸びて、51歳には年々厳しさを増していく。
「今朝も練習場で、いいショットが打てないので不安満載」。
案の定、スタートの1番で1打目が左の木に当たった。
それでもパーを拾って2番から連続バーディもあったが「なかなか簡単にはさせてくれない」。
この日の暫定リーダーに、「飛ばし方を教えて」とおねだりしたのは今週の開幕前だ。チャン・キムは初日の平均飛距離でも、343ヤードで1位を獲った怪物。谷口は281.5ヤード。60ヤードも差をつけられたが、キムには逆に「谷口さんのパットが欲しい」と、言われた。
「今日はその言葉を証明できた」と、キムにスコアで1差と迫って胸を張った。
「今日も調子は良くなかったけど構えたら、とりあえず振って行こうとそういう心境。フェアウェイ置いて、グリーンを捕らえてパットが良かったので、このスコアになりました」。
昨年5月の日本プロで5年シードを得ても「余韻なんてその時だけ。そんなの全然覚えてない。先週勝ったのを、次の週にも覚えてるやつなんてだいたいダメ。もっと練習しなくちゃ」と、自らを追い込み続ける。「自分に求めるものがまだ多すぎて」。
賞金シード落ちを喫した16年以降は封印していた筋トレも、また最近再開した。
「前ほどの重さは上げないけど、今は15キロのダンベル2個をもってスクワットとか」。
おかげで、富士山に向かって登り傾斜も、駆け足で上がれる。
「アップダウンはあるけど、そんなには疲れてはいない」と、言い切ったのは強がりではない。
余裕しゃくしゃくとはいかないが、51歳の得意分野と持てる力を駆使して好発進した。