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三井住友VISA太平洋マスターズ 2002
「ギャラリーに最高のプレーを見せるのが僕らの仕事だから…」
スタートわずか20分前のことだった。
クラブハウスで谷口徹が言った。
「やっぱりダメです…。次の人に、譲ってください」
日曜日に痛めた左肩は回復せず、直前に欠場を申し出た。
この日朝はスタート2時間前に到着し、トレーナーのマッサージを受け、痛み止めを施し、練習場で短いクラブからドライバーまで、まんべんなく、打ってもみた。
「最大限、プレーできるように努力してみたけど…」
特に長いクラブを使うときに痛みがひどく、まったくボールに当たらない。
「こんな状態でやっても、ただ出てるだけのラウンドになってしまう。結局あっさり予選落ち、なんてそんなの嫌だったから…」と苦渋の決断。
常に、「ギャラリーに、最高のプレーを見せるのが僕たちの仕事」と言ってはばからない谷口。
賞金王争い真っ只中のこの時期、欠場は正直、痛い。
が、肩の痛みのせいでファンに良いプレーが見せられないならば、いっそ、繰り上げ出場を待つ選手に権利を譲ったほうがいい、という心意気だった。
幸い、精密検査では、「骨にも筋肉にも異常はない」(谷口)という診断が下りている。
「疲労からきているんでしょう。…しばらく“休みなさい”って言われていると思って、今週、回復に努めます」
次週、念願だったウッズとの直接対決には、万全の体制で臨むつもりだ。