記事
ウッドワンオープン広島ゴルフトーナメント 2007
谷口徹ツアー通算12勝目は「根性で勝った」
“15歳”のアマチュアに敗れたのは次のマンシングウェアオープンKSBカップだった。初日首位でスタートしながら結局13位。
さらに翌週の三菱ダイヤモンドカップは3日目まで、首位をキープしながら5位に甘んじた。
4打差首位でスタートしたこの日最終日も「もしまた、負けてしまったら…」。
精神的ダメージは、次こそ小さくては済まないだろう。
嫌な予感を振り払い、心に誓った。
「今度こそ、絶対に勝つ」。
2位のマークセンは前日3日目から、素晴らしいゴルフを続けていた。
ひそかに怖れたものだ。
「あの身長でよく飛ばすし、アプローチも上手いし、隙がない。あれでもっとパットが入ったらどうなるか」。
果たして、懸念していた通りの展開となった。
10番でバーディを奪って1打差に詰め寄ってきた。12番でいよいよ追いつかれ、13番で一気に2打差の逆転を許した。
一転、追う立場になって持ち前の闘争本能に芯から火がついた。
「絶対に負けない」。
その一心で、懸命に逃げるリーダーを執拗に追い詰める。
17番パー3で、カラーから8メートルのバーディパットを決めて1打差。
最終18番で7メートルのバーディパットを決めて再びタイに並んでプレーオフ。
やはり18番で行われた1ホール目も、フェアウェーから先のラインとほぼ同じ位置につけ、マークセンのパーパットを待たずに6メートルをねじ込んだ。
ツアー通算12勝目をあげて、チャンピオンは素直に認めた。
「内容は、マークセンのほうが上だったと思う。彼は本当に良いゴルフをしていたから」。
しいて自身の勝因を挙げるなら「根性で勝った。最後まで諦めないでよかった」と、谷口は言った。
「プロになって本当に良かったと思う」とも。
この瞬間を何度でも味わうために、血のにじむような努力を重ねている。
最後の最後まで目が離せないスリリングな展開は、自ら招いたものだったがそれでも満足だ。
男子ゴルフ界を盛り上げるためには、もちろん日々のファンサービスも大事だが、「サインだけもらって満足して帰る人はいないでしょう?」。
わざわざ足を運んでくださったギャラリーのみなさんを一番喜ばせる方法は「何よりもまずプレーで魅せること」。
肝心の中身が伴わないと意味がない。
「野球で8−0のゲームを見ても楽しくないのと同じでね。お客さんは、何より僕らの接戦を見たいと思って来てくださるはずだから」。
勝敗を決める運命の1打に思わず飛び出す歓声、鳴り止まない拍手。ゴルフを心から楽しむみなさんの笑顔。
「今回はそんなプレーが出来たと思う。それが何より嬉しいです」。
激戦を勝ち抜いて、谷口はしみじみと言った。