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日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯 2012

谷口徹が首位を死守

執念の首位キープだった。大会3日目はスタートから荒れ狂う風。時間を追うごとに、強くなる。おまけに堅く締まった砲台のグリーンが、牙を研いで待ち受ける。

「今日はみんなが難しい。しっかりフェアウェイをキープして、チャンスが来るのを待つしかない」。
しかし、1番パー5でバーディを奪ったきり、あとはボギーを打つ一方で、谷口にも例外なく苦しいラウンドが続いた。

「パーでいい。我慢して、パーを積み重ねていくことが大事」と、言い聞かせるほどに、風が選手をあざ笑う。
一度は同じ最終組の深堀にリードを獲られた。しかし粘って、再び奪い返した。
さらに16番で「起死回生」のバーディを決めた。
約6メートルのフックラインは「きれいに入ってくれた。値千金」と、ガッツポーズも飛び出した。

44歳の持てる力を振り絞り、耐えて迎えた18番。5月とは思えない冷え込みに、体もうまく回らない。「変なスイングになった」。ティショットを右のラフに打ち込んだ。2打目はスライスをかけて乗せていきたいところだが、木が邪魔になりフルショットも出来ない。

「左奥のバンカーでいい」との目論見も外れて、ボールはグリーン左のラフに潜り込んだ。「でも最後は自分を信じて、柔らかいロブで寄せられた」。パーパットを沈めて最後にもう一度、握った渾身のガッツポーズに、この日の苦闘がうかがい知れた。

平均ストロークは77.000。首位から出た谷口も76を打ちながら、「スコアはあれでしたけど、楽しかった」とは、いかにも勝負師のコメントだ。

アンダーパーにも内容には納得できないと、憮然と上がってきた前日2日目よりも、目を血走らせて「疲れた」と、肩で息をつきながらホールアウトしてきたこの日のほうが、生き生きとしていた。
「ショットの内容は、昨日よりも良かったし、自分のゴルフをしてきたという感じ」。一筋縄ではいかない状況でこそ、選手の資質が表れる。
「最低限の仕事はやれたと思う」。
2打差の首位を守って迎える最終日も、それで勝てるとは思わない。
「2打のハンディがあるだけで、優勝に近づいたとも思わない。明日も厳しい戦いになる。しっかりパーをキープして、チャンスをものに出来るかどうか」。

大会初制覇は2年前。2010年大会も、苦しい戦いだった。今年80回の「日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯」は日本最古のメジャー戦。
「勝った者にしか、その重みは分からない。そこで1回と言わず2回勝てるように頑張りたい」。
昨年は、3日目に無念の棄権で、自ら放棄せざるをえなかった連覇の夢。あのときの無念は2度目のタイトルでしか、穴埋め出来ない。

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