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日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills 2016
谷口徹は「若い選手に来て欲しい」
風が弱かった前半こそ快調だった。スタートの1番ではドライバーを振りちぎり、ティーインググラウンドで同組のベテラン、手嶋多一にガッツポーズを振りかざしてみせる元気もまだあった。
1番から2つ続けて「自分の思い通りのバーディ先行」。前半は2アンダーで折り返すも「9番から、ものすごい風が急に吹き出して。10番に行ったら、打つのも止めたくなるほど突風でした」と、フェアウェイからボギーを打った。
初日とは真逆の風に、バックナインの苦戦を覚悟した。「易しくないと思った」。その後ほとんどのホールでアゲンストの風になると読めば、「パーをとるのも精一杯になる」。やにわに疲労も押し寄せてきた。「インターバルの上りがきつい」。息も上がる。足腰の力も抜ける。「11番でティショットがブリッと曲がって。あんな球が出るのか、と。年を感じた」。
2月の誕生日は、思えばシニア入りまで「もうあと1年ハーフ」。2年足らずで到達も、「レギュラーには出来るだけ長くはいたい」。昨季からそのための筋トレで、飛距離は伸びた。お腹のポッコリもだいぶヘコんだ。「筋肉量はついても、疲労の回復具合は違う」と、つい泣き言が出てしまう。「気持ちはまだと思っても、30代に比べたら、そういうところに年は出る」。
今年から、スポーツアパレルメーカー「アンダーアーマー社」が運営する「ドームアスリートハウス」に、ラウンド後のケアも含めて世話になっても、奥底にたまった疲れは取りきれない。飛んだ、負けたと飛距離では張り合えても、「若い子と比べたら、体の動きも新品と劣化したゴムくらいに違う」。
ピチピチと、柔軟な若い子の体がうらやましい。「みんなに、5歳くらい若さを分けてくれって言ってる。そしたら20歳くらいになれるんじゃ、と」。自虐ネタももう、そのへんにして「年も受け入れやるしかない」。
開き直って後半で見せたベテランの粘り。13番のパー3は右からの風を警戒してフェイスを開いてティショットを打ったら、みごとに「シャンクになっちゃいました」。木の根元の2打目は、グリーンを背にして右手の片手打ちでいっぺん出して、3打目でやっとピンまで5メートルに乗せた。「よくボギーで収まった」。
左に曲げた18番は、2打で乗らずに手前のラフから絶妙の寄せワン。OKパーで息を吐く。宍戸は例年になく堅いグリーン。そこに風が吹けば百戦錬磨のベテランにも、残り2日の展開が皆目読めない。
首位と2打差の3位タイにも「上には居るが、貯金かといえば、たいしたことない。伸ばしていける展開でもないから、自分はとにかくステディにやっていくしかない」。
決勝ラウンドを前に韓国勢の包囲網を浴びるのが、まさか自分とは。「韓国の選手はゴルフも上手いし、日本の若手に比べてガッツもある。48歳に頼られても」と、つい弱音も出る。なんとか一人で壁の役目を果たしたいのはやまやまでも、老いをこれだけ自覚してしまっている今は「若い選手にも来て欲しい」と切に呼びかけた。