地元関西の奈良県出身。
ツアー通算20勝を誇る54歳。
谷口徹が、ここ三甲ゴルフ倶楽部の会員権を購入したのはコロナ禍の2020-21年だった。
隔離や行動制限中でも気兼ねなく練習できる場所を、とメンバー入り。
今ではコースの役員・理事リストに「監事」として名前を連ねる。
開催直前にも3日連続でラウンドし、「その時とグリーンの固さは全然違うけど、メンバーなので。ラインが読めちゃう」と、195ヤードの8番パー3では難解な3メートルのフックラインを読み切った。
スタートの10番ではラフに入れ、連続ボギーでいきなり出鼻をくじかれたが、504ヤードと距離がある次の12番のパー4では、手前から巧みに転がしてチップインバーディ。
いぶし銀が随所で光った。
「メンバーコースで大会が行われるのはやっぱり嬉しいですよ」と、1オーバーの34位タイ発進。
過去2度のタイトル(2004年、2007年)を誇る試合で今年は地の利を満喫している。
「谷口さんはいいですよ…凄くコースを知っているから」と羨むこちらは2年前から所属プロだ。
近藤智弘も、勝手知ったる…と言いたいが、いつも練習するのは、グループが擁する5コースのうち、地元愛知の京和コース。
「ジャパンコースは、ほとんど知らないから」と、開催の2週前にも下見に来たが、いざ本番週はコースが大会仕様に様変わりしていた。
特にグリーン。
「いやもう、この傾斜でこのスピードはヤバいです」と、最後9番では、奥から1メートルのチャンスも打ちきれずに逃した。
「もったいない、っちゃもったいない」と、嘆いた。
「でも、仕方ない、っちゃ仕方ない」と、諦観した。
「だって、この傾斜とラインじゃ次のことを考えちゃうから。恐怖で打てない。なるべく神経使わないように。シンプルにやろうとしたけど、こんなに神経使ってね。ほんとうに疲れちゃった」と、脱力だ。
インから出て2バーディを奪った。
「1アンダーで回れたら最高」と、思った8番で連続ボギー。
「フックラインがものすごい傾斜だったから、3メートル…か4メートルくらいも曲がっちゃった」と、3パット。
「イーブンパーになりましたけど、オーバーパーにはしなかったから。結果的にはいいスタート」と、上々の17位タイ発進に、気持ちの折り合いをつけていたところでスコアボードを確認すると、ちょうどアマの蟬川さんが6アンダーで上がってきた。
「いや…ちょっともう、分からない」と、また悲鳴がぶり返した。
「彼が上手いのは分かってる。でも、このコースは上手いだけでは6アンダーなんか出ないし、気持ちだけでも出ない。いったいどういう神経しているの?」。
自身も、2000年のプロ転向時は、切れ味のショットとアグレッシブなゴルフで新風を起こしたはずだが、それも22年も前のこと。
「彼はもう1勝してやるぞ、って言ってたんでしょ? うまくやれば6アンダー出してやるぞ、って思ってたんでしょ? こっちは1個だけでもアンダーパーで、とか思っているのに。初日だけでもこういうスコアを出すのは本当に凄い」と、ただただ驚嘆。
「こんなコースで結果を出してくるって何が整っているのか…。俺にはない。絶対ない」と、絶句し「俺は俺でやる」。
たとえコースに詳しくなくても所属プロだ。
「頑張りたいのは当たり前にあるし、期待もしていただいている」とへとへとのプレー後に、役員の方々に囲まれ、労われてまた明日と気力を絞る。