Tournament article
Philip Morris Championship 2000
17番のパーセーブで見せた、祈りのポーズ
妥協はしなかった。
車の音、ギャラリーの話し声、足音…。プレー中、どれかひとつでも気になれば谷口は、必ずいったんアドレスを解いて、仕切り直した。
同組の片山が舌をまく。
「とにかく集中力がすごい。自分がヨシとするまで、絶対に打たない。完璧です。僕にはあそこまで徹底できない」
「この日、1番大きいパーセーブ」という、17番パー4。
9メートルのバーディパットを打つ前に、谷口は一瞬、目を閉じ人差し指を額に当てた。それからパットに入った。
これをはずし、2メートルの返しのパットを打つ前に、ギャラリーが動いた。
動いた方向へ顔を向けつつアドレスをほどいてラインを読みなおし、再び、人差し指を額へやる谷口。
このしぐさは、谷口の「集中力を高めるおまじない」だ。
今年の6月。メンタルトレーナーの岡本正善さんと相談して決めた。
「指に神経を集中させて意識を高めていく。そして、額に集中させたものを、今度はボールにぶつけていく。意識が散漫になっているな、と感じたときはいつでも、このおまじないをすることにしている」。
最後の勝負どころでも落ち着き払って仕切りなおし、また、いつもの“儀式”を貫き通して谷口は、大事なパーパットを決めたのだ。