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ブリヂストンオープン 2002
「ゴルフ界の、カリスマになる」
第2打地点左にOBゾーン。ドライバーで、思い切ってここを超えるか、安全に刻むか。
だが、463ヤードと距離もある。第1打の選択に、誰もが頭を悩ませる14番パー4。
招待選手のジャスティン・レナードはここで2日間、5オーバーを叩いた。
「とにかく無難にパーで切り抜けたい」と選手たちが口をそろえる最難関ホールで、「会心のショットができた」と谷口が、胸を張った。
バフィーで確実にフェアウェーをキープ。残り200ヤード弱の4アイアンでの第2打は、ピンに向かって真っ直ぐ飛んで、8メートルのバーディチャンスだ。
これをしっかり沈め、がぜん、息を吹き返した。
前半の9番でイージーボギーを打ち「深く動揺した」と、ハーフターンも、しばらくそのショックをひきずっていた。
出だし3連続バーディでロケットスタートした勢いも一気にしぼんで、沈滞ムードが続いていたが、この日バーディたった11人という「みんなが取れない難しい14番で取れたこと」が、起爆剤となった。
「このバーディが、すごく大きかった。これで、すごく前向きになれたんですよ」との言葉どおり、15番では2メートル、16番で1メートル半を決めて3連続バーディ。
さらに18番では、グリーン左エッジまで運んだ6メートルの第4打をSWで直接入れてチップインバーディと、怒涛のフィニッシュだ。
再び2位タイに浮上してきた谷口は、「日本ツアーのカリスマになる」と言い放った。
谷口には、「できればゴルフを、プロ野球に並ぶメジャーなスポーツにのしあげたい」との構想がある。
そのためには、「僕が何度でも勝ちつづけ、圧倒的な強さを見せつける必要がある」と谷口は考えている。
「かつてジャンボさんを中心にゲームが動いたように、一人のカリスマ的存在が、ゴルフ界全体を引っ張っていく。いま、低迷しているツアーを盛り返すには、そういう人が、必ず一人か二人は必要だと思う。それを、僕が率先してやっていきたいんです」
初の賞金王の座も、その夢の一環。
「数字でもはっきり、示していきたいから」。
明確かつ壮大な目標を持ったときこそ谷口は、誰にも、手のつけられない強さを発揮する。