Tournament article
アコムインターナショナル 2002
「勝つためには、これでいい」
1打差首位で迎えた18番。
ピン左横7メートルのバーディパットが、カップの手前約30センチで止まると、谷口の口元から、(しょうがないなあ)というふうな、笑みがこぼれた。
「最後キメにいったけど、向こう側が下っているから、意外と打ち切れなくて…」
パーパットをちょこんと打って、改めて勝利のガッツポーズ。
かっこよい締め、とはいかなかったが「ここはきっちりパーでいくところ。勝つためには、あれでいいんです」
攻撃ゴルフが身上の谷口が、2打差の首位からスタートした今回のV争いでは、また違った戦いぶりを披露した。
1番でピン奥2メートルにつけ、バーディを奪ったものの、そのあとは、パタリ、とチャンスが決まらなくなった。
最終日で、どのホールもシビアなピン位置だったこともあり、パットが打ち切れない。18番が象徴するように、この日はほとんどショート気味。
ショットにも前日までの冴えが見られなかった。
ピンチのパーパットを決めて、思わず安堵のガッツポーズが飛び出すような、ヒヤヒヤとする展開が、前半続いた。
しかしそんな中でも、谷口の心は平静だった。
イラつくでもなく、焦るでもなく「この状況で無理に行こうとするとミスを呼ぶ。いずれチャンスは来るから、入るまで、じっと我慢」と胸に決め、ホールを進んだ。
7番パー4で左ラフの木の根元に打ち込んだときも、「きっちりボギーで行こう」と決めて、無理はせず確実にフェアウェーに刻んだ。
「下からの追い上げならば、もっと思い切って攻めていっていいかもしれない。でも今日は、いちばん上に立つ者のゴルフ。ある程度のセーフティさも、必要でしょう」
重苦しい雰囲気にも、谷口は途中眉ひとつ動かさず、じっとチャンスを待ちつづけたのだ。