今年の沖縄は、海からの強風に加えて、凍えるような寒さとの戦い。「指先が言うこときかない。微妙にコントロールができず、16番ではチーピンを打ちそうになりました」。
だが瞬時の判断で、クラブから両手を離すことで、ピンチを回避することができた。
ボールはコース右サイドを転がっていき、310ヤード地点で止まった。むしろ、飛距離を稼ぐことができて苦笑い。
「あれは･･･危なかったですね」。
ボギーは、バンカーあごに打ち込んだ13番ひとつだけにとどめて、ホっと胸を撫で下ろした。

コントロールが難しかったショットに対して、アプローチ、パットの調子が良かったことにも助けられた。
「ほとんどＯＫ距離に寄せられたから。無駄な神経を使わずに済んだ」。
グリーンを這うように吹き上げる風にも惑わされることなく、チャンスにつけて、「カンの良さと技術の差」と胸を張った。

宮里藍の出場に沸いた今大会。
新聞、テレビでも大きく取り上げられて、「２日目までは、まるで女子の試合みたいで。奥さんにも、『藍ちゃんしか映ってないよ』と、言われましたよ」。

前日２日目に首位に立った横尾要のことは、ほとんどニュースになっていなかったが、それも谷口には予測できたことだった。
空前の“藍ちゃん人気”には、はなから「勝てないだろう」と、諦めていた。

その宮里が予選落ちしてしまって、「ようやく、“現実”の男子ツアーに戻った感じ。今日からが本当の勝負です」。
冗談交じりに言ったその言葉通り、首位と２打差の通算８アンダーで３位タイ浮上。

年内の開催ながら、来シーズンの獲得賞金に加算される今大会で「幸先の良い１勝を、持って帰りたい」という谷口。
ミシェル・ウィーの参戦で話題となった、先月のカシオワールドオープンでも、最後には主役の座を奪うかっこうで今季初優勝をあげている。
最終日も男子ツアーならではのスリリングなプレーで、最後の最後にその実力を見せつけたいところだ。

• 谷口 徹
• 横尾 要