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日本プロゴルフ選手権大会 2006
谷口徹「明日はレベルの差を見せてあげたい」
たっぷりとしみこんだ雨水は時間を追うごとに地表に浮き出し「ティグラウンドまでカジュアルになっていた」と、振り返った高山忠洋はこの日最後まで滑って右に行くショットに苦しんだ。
ドロップしようにも、そこらじゅう水浸し。
「水のない場所がなくて、結局ラフから打ったホールもある」(3位タイの近藤智弘)。
仮にドロップできる箇所を見つけても、かえって沈んでしまう場合もある。
7位タイの矢野東は、最終18番で第2打が手前のバンカーに。ボールは水溜りに沈んでいたが、「ドロップしたら目玉になる恐れがある。そのまま打った」。1.5メートルに寄せたが、これを外してボギーとした。
誰もがひとつは嫌な記憶を抱えてホールアウトしてくる中で、谷口は「雨に癒された」と言ってのけた。
環境音楽のCDを聞くメンタルトレーニングを始めてもう長い。この日の雨音にも「アルファー波が出てリラックスしてプレーできた」という。
会場の谷汲カントリークラブは、16番から距離の長いホールが続く。難易度の高い上がり3ホールも「エンジョイできたのが良かった」。
242ヤードの16番パー3。4番ウッドで1メートルにピタリとつけた。
18番は、グリーン手前からのアプローチが2.5メートルもピン奥へ。
「下の選手を喜ばせてはいけない・・・」。
気合が入った。レインウェアを脱ぎ去った。真っ赤なポロ姿になって、執念でねじこんだ。
パーに収めて通算11アンダーは2位と3打差。
前日までスイングにいろいろ悩んで、納得のいくゴルフができていなかった。
しかし、「今日は下がウェットだし。(クラブを)振り抜くことだけ考えてやった」。
悪天候に雑念が入る余地もなかったことが、かえって良い結果を生んだ。
最終日は、高山との最終組。
普段から谷口にスイングのことでかわかわれている高山は「明日はショットの打ち分けを見せたい」と意気込んでいる。
「相手は鼻息荒いみたいだけれど。僕が綱を引っ張ってコントロールして、レベルの差を見せてあげたい」と、軽くいなした。
最終日は妻・亜紀さんが、長女・菜々子ちゃんを連れて応援に行くと張り切っているが、「家族が来るからといって、意気込むほど初心者じゃない」と、余裕の構え。
「・・・まあ、子供はまだ分からないだろうけれど。大きくなって父親がプロだったってことが分かるよう、一緒に写真でも撮っとかないとね」と、笑ってみせた。