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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2007
初出場のプロは7人
この中で初優勝組は3人。
上田諭尉と菊池純、そして篠崎紀夫だ。
今季のチャンピオン第一号が上田だった。開幕戦の東建ホームメイトカップで、ツアー初優勝。会場の東建多度カントリークラブ・名古屋(三重県)は最終日に大きな地震に見舞われたが、それすら気がつかないほどのプレッシャーの中、弟の崇宏さんと二人三脚で栄冠を勝ち取った。
このゴルフ日本シリーズJTカップは「俺なんか、一生出られない」。そう思っていた。
シード復帰元年の今年は、まずそれを保持することが目標だった。
「それが間違って勝ってしまった」と、真顔で言う。
「俺はまだまだヘタクソだから・・・。今週の出場権は本当に、ご褒美のようなもの」と謙虚に受け止め、「せめて最後は楽しんで回りたい」。
“最初”と“最後”をしっかり締めたい。
菊池は、8月のサン・クロレラ クラシックだった。鈴木亨とのプレーオフ3ホールを制して人目をはばからず、大泣きした。
95年にプロテストで片山晋呉と並ぶ2位に入ってデビューを果たしたものの、初シード入りしたのは2002年。
昨年にはぎっくり腰をやった。
それでも、4年目のシード権を死守。
今年は「体に負担のかからないスイング」を目指していた最中に、ふいに掴んだ勝利だった。
喜びの報告に、妻・慶子さんは「嬉しいけど悔しい」と言った。
腰を痛めたときには、かわりに重たいバッグを運んでくれるなどやさしさを見せる一方で、負けん気が強く、「なぜか僕のことまでライバル視する」。
夫の初優勝を喜びながら、嫉妬してみたり「そういうところが面白くて大好きなんです」と、のろける。
今週は、自宅から1時間ほどという交通の便もあり、その慶子さんが今週、長女さくらちゃんと次女・綾実(あやめ)ちゃんを連れて、久しぶりに応援に来てくれる。
「家族の前でヘタこかないように・・・。初優勝を、見せてあげることができなかったから、最後に家族の前で良いところを見せたい」と気合を入れた。
篠崎もまた、プレーオフの末にもぎとったツアー初優勝だった。10月のANAオープンはタイのチャワリット・プラポールと5ホールの死闘を繰り広げた。
途中、何度もピンチを迎えながら、しぶとく食い下がった。
くじけそうになるたびに、ひとつ上の兄貴分・立山光広のアドバイス。「どうせ負けるなら、悔いのない負け方をしろ」との言葉に歯を食いしばった。
プロ16年目のウィニングパットを決めた瞬間は、37歳が男泣き・・・。
同時期に開催される出場優先順位を決めるファイナルQTの常連が、チャンピオンとして晴れて憧れの舞台にやってきた。
下積み時代は、妻・美紀さんが「いつか旅行に行こう」と言ってコツコツと貯めていた「500円玉貯金」まで手をつけたこともある苦労人は、このゴルフ日本シリーズJTカップに出場する選手は「みんな、お金持ちという印象だった」と笑う。
今週は、立山の専属キャディの宮川恭輔さんを“レンタル”。
男子のない週は女子プロの全美貞(ジョン・ミ・ジョン、韓国)のバッグを担ぎ、 今年5月にやはりここ東京よみうりカントリークラブで行われたサロンパスワールドレディスゴルフトーナメントで優勝に導いた敏腕キャディはコースを隅々まで知り尽くしており「今週は、すべて彼に任せます」。
全幅の信頼を置く強力助っ人と、今季最終戦を景気良く締める。