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〜全英への道〜 ミズノオープンよみうりクラシック 2008
暫定2位タイの山下和宏は、初優勝と初メジャーのチャンスに…
その後も何かと山下のことを気にかけて、今大会の開催前も「新しいコースなんだから。練習ラウンドに来い」。
しかしツアー連戦中ということもあって、結局1度しか回る機会がなく、「そんなんじゃダメじゃないか。もっと練習しに来ないと」と、今週もカツを入れられたばかりだ。
まだ、ツアーの出場権すらない時代には、今大会の前身にあたるよみうりオープンに主催者推薦で出場のチャンスを与えてくださったのも1度や2度ではなかった。
それだけに、「ここで活躍することが何よりの恩返しになる」と、張り切っている。
今季は、チャレンジトーナメントランク7位の資格で本格参戦。
今大会上位4人には全英オープンの出場権がかかるが、首位タイでスタートした初日は「僕には、初シードのほうが大事」と話していた。
毎週土曜日早朝に放送中の東京FMのラジオ番組「ムービングサタデー」で電話取材を受けたときも、パーソナリティに「ぜひイギリスに行ってくださいね」と言われたが「いや、そちらはあまり…」とお茶を濁したのだが、妻・由美子さんに「なんでがんばりますって言わないの!?」と、あとで叱られた。
由美子さんは、もし行けることになったら、5月に生まれたばかりの長男・泰生(たいせい)くんを、実家に預けて行こうか、と具体的なプランまで考えはじめている。
「妻のほうが、すっかりその気になっていて…」。
その勢いに気圧されて、本人も次第に気持ちが変化してきた。
野球からゴルフに転向した地元・大阪府立島上大冠高時代、自宅近くの淀川の河川敷ゴルフで腕を磨いた山下だが、ゴルフ雑誌で杉原輝雄がこんなことを言っていたのを思い出す。
「全英に行く前は、河川敷に行け」。
この格言(?)を、自分はもうずいぶん前から実践している。
風の中のゴルフなら、お手の物だ。
それに、インターネットで調べてみたら、今年の会場のロイヤルバークデールはメジャーの中でも比較的、距離が短いコースという。
この日会場を訪れたR&Aの全英オープン実行委員のデビッド・ボンソール氏も、「飛ばすだけでは通用しない。技が問われるコース」と話していた。
そんな情報をかき集めるにつけ、「みんなが飛ばしている中を、刻んで、転がして、いかにパーを積み重ねるか…。もしかしたら、僕のゴルフはイギリスに向いているのかもしれないとも思えてきた」と山下はいう。
前日2日目の新聞記事で、16歳の石川遼が「この位置にいて、狙わないわけがない」とコメントしているのを聞いてますます発奮。
「確かに、イギリスも優勝のチャンスも一生にあるかないかですからね。最後まで手を抜かないで頑張ります」と意気込みを語ったあとに、「…なんだか、僕もすっかりその気になってますね」と、笑った。
山下和宏(やましたかずひろ)
1973年11月5日生まれ、大阪府出身。
中学時代は野球少年。しかし、特にチーム戦のプレッシャーに弱い自分に限界を感じ、地元の大阪府立島上大冠高進学と同時にゴルフに転向。自宅近くの河川敷ゴルフで腕を磨いた。
当時、全盛期のジャンボ尾崎に憧れて、卒業と同時に兵庫県のザ・サイプレスゴルフクラブの研修生となり、98年にプロ転向を果たした。
昨年のチャレンジトーナメントランク8位は、今季前半戦の出場権が得られる上位7人に入って本格参戦。身長175センチ、体重70キロ。