ギャラリーの拍手や声援には必ず笑顔を向けて、大きく手を振って答える。それは、たとえミスしたときでも同じで、礼儀正しくいつも律儀で丁寧な対応に、関係者にもファンが多い。一昨年前、主戦場にしていたチャレンジトーナメントでは、ひそかに「チャレンジのプリンス」と呼ばれていた。

この日、わざわざ関西から応援に駆けつけたファンは、「山下くんは、いつも爽やかで心が洗われる」と話した。

昨年のシーズン中盤からバッグを担ぐ専属キャディの柳楽幸憲（なぎらゆきのり）さんは、「僕は、まだ不慣れでたまに失敗するのですが、その都度、丁寧に教えてくださって。他の選手だったらきっと、こうはいかない。もっとひどく怒られていると思います」と、感謝する。

ラウンド中は、柳楽さんにそっと耳打ちしてボールを拭いてあげるよう指示するなど、他の選手にもさりげない心配りを見せつつ、しっかりとゴルフにも集中していた。

ボギーにしてもおかしくない場面でしぶとく粘り、ピンチをチャンスに変えてバーディを奪うしたたかさを見せた。

ステディな中にも、今週の課題でもある攻めの姿勢も最後まで失わなかった。
504ヤードと距離も長く、小樽のアーメンコーナーと畏れらる16番パー４も「逃げそうな場面でも前向きに、頑張って打っていけた」という。
エッジまで200ヤードの第２打は「７番ウッドで池の上を狙って打てた」とパーでしのぎ、「あのショットは明日につながる」と、充実感をみなぎらす。

４つ伸ばして通算10アンダーは首位と１打差の単独２位で、飛ばし屋２人と決勝ラウンドに挑む。
３位の津曲は今季、ともにシード元年のよしみで、ときおり食事をともにする仲だ。
先週は「スコアが良かったほうがメシをおごろう」と約束して、13歳も年下に払ってもらったばかりだ。「だから今週こそご馳走してあげようと思います」と、リベンジを誓う。

そして石川遼には、きっと常にピンだけを見つめる果敢な攻めに「相当あおられると思う」と覚悟する。
そんなときこそ、普段の決めごとを思い出す。
「いつもどおり、マイペースを貫きます」。
たとえ飛距離で前を行かれても、べたピンのゴルフを見せられても「つられない」と、心に決めた。
17歳には「“おっちゃん”のゴルフを見せてやります」と、35歳に気負いはない。

• 山下 和宏
• 石川 遼