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日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯 2011
連覇を狙う、谷口徹
体調不良とコースの難易度に加え、最終日は平塚哲二と藤田寛之とのデッドヒートに、いつもは強気な選手も、「今日はさすがに心が折れそうになった」と、打ち明けたほど。
それほどの激戦を制し、射止めた自身初のプロ日本一の座も、戦い抜いた直後は精魂尽き果て、声を出すことすらままならなかった。
満員の観衆から「聞こえないよ」と、矢のようなクレームを受けたのは、ヒーローインタビューでのことだった。高性能のマイクすら拾えない、か細い声のチャンピオン。慌てて言葉を振り絞っても、かすれ声は治らなかった。
「おっちゃんは、あのときそれくらいに疲れていたんです」。
自嘲の笑みで、改めてそう振り返ったのは今年3月。
自身の出身地は、奈良県にある児童養護施設を訪問。2006年からライフワークにしている社会貢献活動は、賞金の一部や副賞を恵まれない子供たちに贈るだけでなく、シーズンオフには必ず寄贈先に出向き、子供たちとの触れ合いの時間を作ることにしている。
まずは子供たちに自身の活躍を知ってもらおうと、昨年大会のDVDを見てもらった。最終日の模様に当時の状況が、ありありとよみがえってきた。
照れくさそうに、子供たちに打ち明けた。
「おっちゃんなあ、このとき疲れすぎてて声が出なかってん。それでお客さんに叱られてん」。子供たちの無邪気な笑いを誘った。
そんな子供たちとの他愛のない触れ合いこそ、40代を越えてなお第一戦で堂々と若手と張り合う原動力だ。
昨年の日本プロは、78回という長い歴史の中で、初めて大会に冠スポンサーがついた。副賞の日清食品のカップヌードル10年分もすべて子供たちに贈り、今回の訪問先でも大いに喜ばれた。
“プロゴルファー”といってもピンと来ない子供たちも、「ラーメンを贈ってくれた人だ」と院長先生に紹介されると、「あぁ・・・あのラーメン!!」「本当に、凄く美味しかったよ」と、口々に感謝の言葉でどよめいた。
連覇への炎が燃え上がった瞬間。
「今年もプレーしている姿をみんなにテレビでたくさん見てもらえるように頑張りたい」。その一心で、谷口が思い出の舞台に降り立つ。