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ブリヂストンオープン 2016
山下和宏は自身11度目の最終日最終組に
「でもショットが良かったので。今まではそこと向き合わずに、だましだましやっていたのがうまくいってた」。
ついに現実に向き合わざるをえなくなったのは、2年前だった。さらに昨年の開幕時には「試合に出たくない」と思い詰めるまでに症状は悪化。試行錯誤は続いていた。
解決の糸口は、ひょんなことからだった。
練習場で、そこらに散らばったボールをいくつかポンポンと打った際に、一つディボット跡から打った1打にひらめきを感じた。
身構えていなかった分、気軽に打てたのが良かったかもしれない。
転がし寄せるアプローチが難なく出来て、「これは」と手応えを感じて気がついた。
「イップスと思い込んでいたけど、自分の打ち方が悪かったせいだったかもしれない」。イップスは、精神的な部分から来る要因も大きいと言われているからそう思えれば、解決への出口はぐっと近くなる。
今までの打ち方を改善して、成功体験を増やしていければ、手もスムーズに動きはじめる。
パット時に、カニの爪のような形で握る“クローグリップ”にも徐々に違和感が消えつつあり不振からの脱却を、ひしひしと感じられるこの日の3日目となった。
8つのバーディもさることながら、4番、14番、17番での寄せワンパーには「心が、晴れてきている。明日も自信を持って、プレーが出来る」と、確かな光明を見ている。
先週まで19試合が終わり、今年はまだ40代の優勝者が出ていない。
先週は、片山晋呉がただひとり気を吐いたが5位タイに終わった。
今週は、42歳の山下にそのチャンスが回ってきたが、思わず「そんなの知らない」と、そこだけは蚊帳の外にいたい気分だ。
自身11回目の最終日最終組で、山下が狙うのはプロ19年目の初優勝だ。
「確実に世代交代が進んでいるのは悪いことじゃないし、40代がまだ勝っていないからといって、僕にはなんともしようがない。言える立場でもない」と、余計な気負いは背負わない。
「ライバルがたくさんいる中で、自分の出来ることに最善を尽くして精一杯戦うだけ」。
史上9番目の年長Vなるか。