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中日クラウンズ 2007

谷口徹「自分が一番有利と思ってやる」

できるだけ、グリーンまで80ヤードの距離を残すよう心がけている。サンドウェッジでフルショットの距離。日に日に固くなる和合のグリーンに球を止めるには、それが最善の策だ。

仮に中途半端な距離が残ってしまったら、体に染み付いた「カン(勘)ピューター」を、フル稼働。何より、フィーリングを大切にするタイプだ。
「特に、打ち方にコツなんてないけれど…」。サンドウェッジを短めに持って、微妙に角度をつけて、程よいスピンをかけて打つ。

同じ組の中嶋常幸が、舌を巻いた。
「今度、お前のその技を教わりに行きたいよ」。
「何をおっしゃる。僕こそトミーさんに教わりたいくらい」と、謙遜したが、ベテランに誉められて悪い気はしない。

「コースとの相性は良い、と思って毎年やっている」と、谷口は言う。
しかし、いまだ「優勝に縁がない」。
2003年の5位タイが最高だ。

専属キャディをつとめて4年になる、清水重憲さんが言う。
「谷口さんは、常に攻めていく人ですから」。
だが、和合コースは攻めるだけのゴルフでは通用しない。
溢れんばかりの闘争心がジャマをしていたかもしれない。

清水さんはそれ以前、田中秀道のバッグを担いでいたばかりか、2000年大会の優勝キャディだ。
そのとき、秀道が実践していたのが「ピンデッドを狙わず、ボギーを叩かない我慢」のゴルフ。
「今年は、谷口さんもあのときの秀道さんのようなプレーが出来ていると思う」と、清水さんが太鼓判を押した。

家族が応援に駆けつけたのは、前日初日。
長女・菜々子ちゃんは日に日に可愛さを増して、「お父さんのマネをして」と言うと、ゴロンと横になっていびきをかくフリをしたりする。
子供の顔を見ると、つい甘くなる。
「お父さんでちゅよ〜」と、赤ちゃん言葉で喋って他の選手に呆れられたりするが、プライベートはきっちりと分けている。
今週のホテルは、部屋を別々に取った。
先週、自宅通勤のつるやオープンで、奈々子ちゃんが夜泣きをして眠れなかったためだ。
「試合のときは、ゴルフに集中したいからね」。
酒もいっさいやらない谷口は、早々にベッドに入って翌日の英気を養う。

スポンサー競技の中で、最も古い歴史を誇る今大会。
「自分が一番(優勝に)有利かな、と思いながらやる」。
そう言った瞬間、戦う男の顔になった。



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